オープンデータ・アイデアソン in 松江
~地域の言葉で考えるオープンデータ~
開催報告

 平成25年11月26日(火)に「オープンデータ・アイデアソン in 松江」が松江オープンソースラボにて開催されました。サブテーマを「地域の言葉で考えるオープンデータ」と題し、本事業では唯一の地方都市での実施ということで、松江のみならず周辺地域からも多くの注目を集めることになりました。オープンデータという言葉は知らなくとも地域社会の問題を解決したいと考える人、地方だからこそ可能なオープンデータの活用アイデアを温めている人など、それぞれの思いを抱く人々に恵まれ、参加者は51名にも達しました。

 あまりの盛況に一時は会場のキャパシティの問題で、一部の人に参加をお断りしなければならない可能性もありましたが、松江市のご尽力により、無事に希望者全員にご参加いただくことができました。このほか松江市には、市役所職員の皆様に各テーブルあたり1名以上がご参加いただくなど、全面的なご協力をいただきました。

13:30 開始

 冒頭には、松江市副市長・松浦芳彦様、経済産業省商務情報政策局情報政策課情報プロジェクト室室長・和田 恭様、総務省情報流通行政局情報流通振興課企画官・井幡晃三様より、ご挨拶いただきました。

松江市・松浦様 経済産業省・和田様 総務省・井幡様

13:50~14:30 ライトニングトーク

 続いて、5人のモデレータにオープンデータおよび地域の課題について5分間で語る、ライトニングトークに登壇いただきました。

タイトルモデレータ(敬称略)
「街づくりと観光」(PDFはこちら野田 哲夫(島根大学)
「地域づくりは健康づくり(健康・医療)」(PDFはこちら濱野 強(島根大学)
「安心安全に子育てをするためのオープンデータとは」(PDFはこちら井上 浩(ネットワーク応用通信研究所)
「Wikipediaタウンのご紹介~公民連携で地域歴史資産をオープンデータに~」(PDFはこちら高橋陽一(LODチャレンジ・インディゴ)
「B2Bサービス」(PDFはこちら庄司 昌彦 (OKFJ)
「オープンデータを使って地域の交通安全を考える」(PDFはこちら丸田 哲也(NRI)

島根大学・野田様 島根大学・濱野様 ネットワーク応用通信研究所
・井上様
LODチャレンジ・高橋様 OKFJ・庄司様 NRI・丸田様

14:40~16:20 ディスカッション

 その後、社会課題テーマごとに6のテーブルに分かれ、参加者それぞれの視点から地域の課題を見つけ、どのようにしたら解決することができるのかアイデアを練り、さらにアイデア実現のために必要となるデータはどのようなものか、実現にあたってどのようなハードル(技術、ルール、人等)が考えられるか、約100分間にわたって議論いただきました。

テーブルNoタイトルファシリテーター(敬称略)
1バリアフリーな街づくりと観光(観光)野田 哲夫(島根大学)
2健康づくり支援ナビ(健康・医療)濱野 強(島根大学)
3安心安全な子育て(子育て支援)井上 浩(ネットワーク応用通信研究所)
4地域資産の発見とアーカイブ化(地域振興)高橋陽一(LODチャレンジ・インディゴ)
5地元産業を強くする(地域振興)庄司 昌彦 (OKFJ)
6日本で一番安全な街にしよう(安心安全)丸田 哲也(NRI)

 アイデアソンでは、ディスカッションの進め方に決まった方法はなく、テーブルごとにファシリテーターの皆様に応じたスタイルで進められました。付箋や模造紙を活用したり、クリップボードに順番にアイデアを書いていったりと、その手法も創意工夫あふれたものでした。ご参加いただいた方は、誰もが真剣に考え、積極的にご意見を述べられており、その熱意に圧倒されるばかりでした。

16:25~17:05 結果発表

 最後に、各テーブルで議論いただいた内容を、それぞれ5分間で発表いただきました。

テーブルNoアイデア名称利用するオープンデータ
議論の概要
1
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松江ナビ、口コミ情報のパワーのデータ化バス時刻表情報、バス運行リアルタイム情報、イベント情報等
「バリアフリーな街づくりと観光」をテーマに議論した。課題として、公共交通のアクセスが不便であること、外国人観光客への案内が不足していること、観光コンテンツの情報が不十分であることや、情報が集約されていないことが挙げられた。また、「口コミ情報」は貴重だが、データ化されていないとの課題も出された。解決策として、行政が保有するバス時刻表情報、運行リアルタイム情報、イベント情報などと、民間のもつ電車運行情報、レンタサイクル情報、バリアフリー情報を連携し、「松江ナビ」として提供するアイデアや、民間の飲食店・イベント情報を出しやすい仕組みを作り、口コミ情報のパワーをデータ化する等がアイデアとして出された。そのために、オープンソースRubyの精神を活かし、ボランティアの力を活用してはどうかなどの意見も出された。また、「不便なもの」こそ観光資源になりうるので、利便性だけにとらわれずに資源を捉え、データ化を行っていくことが重要であるとの議論もされた。
2
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ウォーキング経路と通学路と一緒にした見守り/人探しアプリ、カロリーを身近な運動に置き換えるアプリ通学路情報、登下校時刻情報、ヒヤリハット情報、交通量情報、積雪/凍結情報、施設の利用状況等
島根県では医療費が年々増加傾向にあり、個人が主体的/継続的に健康づくりを実践するためにはどうしたらよいかを議論した。課題として、健康に対して意識が低い人にとっては、「飽きる」、「データを記録するのが面倒」など、モチベーション維持が困難(ネガティブ要素が多すぎる)であり、これを解決するためには、「自分の健康づくりに社会的意義を持たせるとともに、気が付いたら健康になっていた」のような仕組みが実現できないかと意見があった。具体的には、「子供の見守りを兼ねたウォーキングアプリ」というアイデアが出され、公共データとして、「通学路情報」、「交通量情報」、「路面状況情報(積雪/凍結等)」が有用ではないかとの意見が出された。
3
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安心安全な子育て地域ポイントランキング安全、生活、健康、地域行事、学習、娯楽情報
「安心安全な子育て」をテーマに議論を進めた。課題として、安心して子育てができる地域に関する情報が一元化されていないことが挙げられた。課題を解決するアイデアとして、地域や医療、学校など子育てにかかわる情報をポイント化してランキングし、地域間の競争意識を生み出すことで、行政と住民が一体になった子育てしやすい地域づくりを促進できるのではないかという結論に至った。指標として『安全』『生活』『地域行事』『健やか』『学び』『遊び』を設定し、それぞれを評価するために必要なデータを議論した。例えば、『生活』であれば「スーパー・コンビニの数」「託児サービスの利用率」「バス停・駐車場」「公共交通機関の運行数」「お店の開店率」「待機児童数」「児童クラブの空き状況」等が挙げられた。
4
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理想的県人ジェネレーター 気象統計情報、家計調査、社会・人口統計体系、農業統計、属性データを含む地域別文化財リスト
「地域資産の発見とアーカイブ化」をテーマに議論をした。Wikipediaタウンの事例を議論の入り口として、地域の「特筆性」のある資産をどのように発見したらよいかの検討を行った。まずは参加者全員で、「松江/島根」の特筆性ある地域資産を抽出した。しじみ、和菓子などの食べ物や、日照時間が短いなどの天候条件、松江城、出雲大社といった建物、神話、自然景観など多く挙げられた。これらに対して、どのようなデータがあれば「特質性」を立証できるのか、どのような形で地域内外の人々に提示するのが効果的かを検討した。サービスアイデアとして「理想的賢人ジェネレーター」を考案した。これは、統計等のオープンデータを活用し、他地域との比較により指定地域特性の妥当性を検証し、地域特性の擬人化を行うサービスである。住民の生活状況を対比することで「理想的地域人」からの乖離/充足度を測ることができるものである。
5
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松江の産業の見える化とスイス化店舗情報、商業統計、産業統計情報、経営相談の中から得られる情報、農協、金融機関の持つ情報等
「地元産業を強くする」ことをテーマに地域の学生、民間企業、市役所など様々な立場から地域の課題を出し合った。伝統工芸(和菓子など)等の分野で高齢化が進み後継者が不足していること、若者が県外に流出していることが課題として共有された。また具体的に、名産品であるしじみの漁獲量が下がっているにも関わらず価格が上昇せず、価値に対して儲けがすくないこと、一方、つるし柿はブランド化が成功し高値で取引されていることが紹介され、①価値に応じたビジネスモデルを作ること(ブランド化、ストーリーづくり(スイスが成功例))、②ブランド化が活きる最適な市場を見いだすことで、地域産業が収益化し、それを広く共有できれば、後継者不足、若者流出に歯止めをかけられるのではないかと考えた。課題を解決するアイデアとして、松江の産業(収益構造)やプロセスを見える化できる場を作り、儲かっている地元ビジネスの収入や付加価値を公表して、協業しようとする人のマッチングや若者の就職等に活用してもらってはどうかとの結論に至った。
6
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通行量を減らそう活動、一方通行避けるナビ、全バス路線ロケーションシステム道路の事故発生箇所情報、道路別の通行量、自動車の保有台数、道路台帳附図、一方通行道情報、バス停情報等
「日本で一番安全な街にしよう」をテーマに、まず「安全な街はどんな街か」について意見を出し合った。防災、防犯、交通安全などに関する様々な意見が出された。その中から、特に、交通安全について、アイデアを深めた。そもそも車の通行台数を減らすことができれば、交通事故の件数を減らすことができるのではないかとのアイデアが出た。具体的には、道路別の通行量や、事故発生件数を把握して、迂回路の設定など対策を考えてはどうか等の意見が出た。また、地域のバリアフリーや歩道の拡幅分離を検討する際に、住民の意見を反映することも重要だとの意見があり、島根県は道路台帳付図を公開しているので、この情報を合意形成に活用できないかとの意見も出された。その他、交通事故を減らすための「一方通行を避けるナビ」や、学生が大雪の日に授業に遅れたりしないようバスがどこにいるかわかる「全バスロケーションシステム」などもアイデアとして出された。

 松江会場での成果は、さすがに地域の本当の課題に対して真摯に取り組んだものでありながら、解決手法に落とし込む際に工夫したものが多く、アイデア名称を聞いただけでは内容がわからないものの、説明を聞くと「なるほど」と深く納得するものばかりでした。参加者からも次のような感想をいただきました。

  • 様々な立場の方からアイデアを聞くことができて、大変刺激になりました。願わくば、もっと時間があり、メンバーシャッフルしてもう1周!とやれれば、更にキラリと光るアイデアが絞り出せたのではないかと思いました。それこそ、アイデアソンの醍醐味かと思います。(IT事業者)
  • とても有意義に過ごせました。今回で終わるのはもったいないので、松江でも継続した取り組みにしていきたいと思います。(大学関係者)
  • ケーブルテレビの地元ニュースでも長めに紹介されていました。松江でも盛り上がりを作っていただいたこと、感謝しております。(自治体関係者)
  •  アイデアソンの終了後、近隣のレストランにて懇親会の場を設け、こちらにも多くの方にご参加いただきました。松江ではオープンソース関連のイベントも多く開催されることもあって、技術や仕組みへの理解も深く、東京や大阪よりもアイデアを具体的なカタチにしようとする強い意志を感じることができました。松江のみならず、近隣地域の住民や自治体の方にも多数ご参加いただき、地方におけるオープンデータへの期待が高まっていることを感じることができたイベントでした。

     ご参加およびご協力いただいたすべての皆様に対して、ここに感謝申し上げます。

    ※アイデアソンの模様を記録したアーカイブ映像は、近日中に公開いたします。

    問い合わせ先

    オープンデータ・アイデアソン事務局(JIPDEC内)
    od-matsue[at]tower.jipdec.or.jp